広瀬毅 建築設計室

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【建築ノート】霊仙寺の家

【建築ノート】では、私たちが設計するときに何を考え、何を目指し、何を悩んで(笑)設計しているかをお伝えしていきます。今回は「霊仙寺の家(2008)」のお話しです。
「霊仙寺の家」西側外観

森に佇む「霊仙寺の家(西側より)」  東西はコンクリートの壁が立ち上がる

「霊仙寺の家」は飯綱町にある霊仙寺湖の近くの別荘地にあります。お施主様(以下Hさん)は長野市の方。週末に家族でそこでの生活そのものを楽しむ為の家をつくりたい、というご要望でした。Hさんはご自身も建築に関わる仕事をされています。最初は自分で設計しようと思ったとのことで、この家でやりたい事などとてもはっきり考えておられました。※
南側外観

南側外観 東からキッチン〜リビング〜浴室へと続く

生活を楽しむ〜太陽の動きに合わせたプランニング〜
Hさんからいただいたコンセプトには「太陽の動きに合わせたプランニング」というものがありました。つまりそこでの1日の生活サイクルに合わせたプランです。寝室は東側に配置して朝日とともに目覚める、そこから西に向かって食事の支度〜食事〜日中、庭と行き来しながら生活出来るリビング、そして西日の入る浴室で1日の疲れを癒す・・・。素敵なコンセプトですね。これを素直にプランに置き換えて行きました。南向きのキッチンも生活そのものを楽しみたいというHさんのアイデアです。そしてリビングには引き込みで3.5mの大開口を設えることにしました。
リビング

南に大きく開いたリビング 土間から庭へ連続すす

構造を考える〜庭につながる大空間〜
これらの機能をシンプルな形でなおかつ庭に大きく開いた空間にまとめたい。その開放的な空間と積雪荷重(多いときは2m近く積もります)を考えると、木造でもきちんと構造計算をしてつくりたい。構造は集成材を使用した「SE構法」を採用する事にしました。これで広がりのある空間と大きく南側に開口部を取ることが可能になりました。
南側外観

南側外観 ウッドデッキと列柱

積雪を考える〜ウッドデッキと列柱〜
何度も打ち合わせを重ねながら東西に長い矩形の片流れの箱へとプランはまとまってきました。ですが、「霊仙寺の家」ではもう一つ解決しなければいけない問題がありました。それはその雪の多さです。この界隈の住宅はその積雪に対応するために、ほとんどの家が2m近い高基礎の構造になっています。Hさんはリビングと庭のつながりを生活のポイントと考えられていたため、リビング〜土間〜庭をできるだけ同じ高さにしたかったのです。
その解決を南と北に深い軒のあるウッドデッキを設け外との距離を保ち、デッキに列柱を組み込むことで、場合によってはこれを利用して雪囲いができるようにしました。また、東西はコンクリートの壁を2m近く立ち上げることで、外壁を積雪から守るようにしました。
これらの工夫だけではなく、「霊仙寺の家」にはこのほかにも隠れ家っぽいロフトやまきストーブとパネルヒーターの暖房、シンプルな木製階段など、様々な工夫を盛り込み、この後の私たちの設計に大きな影響を残してくれました。振り返ってみると一つの転機となるような建物でした。あらためてこの設計を依頼してくれてたHさんにこの場を借りて感謝したいと思います。
※ 単に「間取り」ではなく、この家で「やりたい事」をはっきり考えておくこと、これは良い家をつくるコツでもあります。

2016-01-02

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